「痛いから動かさない」が慢性痛をつくることがあります

「ケガは治ったはずなのに、痛みだけが残っている」
「動かすと悪化しそうで、つい体をかばってしまう」
こうした経験はありませんか?
実は、痛みが慢性化する背景には『体』だけでなく『心の反応』が深く関わっていることが分かってきています。
その考え方のひとつとして、『fear-avoidance model(恐怖‐回避モデル)』があります。
痛みを感じたとき、人はどう反応する?
人は体に『痛み』を感じると、無意識のうちにこう考えます。

- 「何か大きな異常があるのでは?」
- 「動かしたらもっと悪くなるのでは?」
- 「動けなくなってしまったらどうしよう…」
このときに生まれるのが 「不安」や「恐怖」 です。
この不安に対して、人の反応は大きく2つに分かれます。
不安と向き合う場合

- 「少し怖いけど、様子を見ながら動いてみよう」
- 「専門家に相談して正しく対処しよう」
この場合、不安は次第に小さくなり、体も回復しやすくなります。
不安から逃げる場合

- 「痛いから動かさない方がいい」
- 「この動きは危険だと思うから避けよう」
- 「恐ろしい病気だったら嫌だから病院には行きたくない」
この場合、痛みの原因もわからず、不安や症状を放置してしまうことになります。
『怖い』=『動かさない』の悪循環

痛みへの恐怖が強くなると、
- 体のちょっとした違和感にも敏感になる
- 動かすこと自体が怖くなる
- 日常生活の動きが減る

結果として、
- 筋力や体力が低下する
- 関節や体の柔軟性が低下する
- 動かないことでさらに痛みや不調を感じやすくなる
- 気分が落ち込み、抑うつ的になる
こうして痛み → 不安 → 回避 → 体の機能低下 → さらに頑固な痛みという悪循環が生まれ、痛みが長引いてしまうのです。
これが fear-avoidance model(恐怖‐回避モデル)の考え方です。
実際に研究でも明らかになっています
研究では、痛みが出たばかりの段階で「不安」や「怖さ」が強い人ほど、1年後も痛みや生活の不自由さが残りやすいことがわかっています。

特に、
- 「この痛みは一生続くのでは」と考えてしまう
- 「動くと悪化する気がする」と感じる
- 痛みのせいで行動をどんどん制限してしまう
こうした心理状態は、痛みの慢性化と深く関係していることが分かっています。
あなたの気持ちにより沿った治療が大切

痛みと心(気持ち)に関する興味深い研究があります。
腰痛の患者さんを
通常の理学療法(リハビリ)
不安や恐怖を和らげる説明+少しずつ体を動かす理学療法(リハビリ)
に分けて比べたところ、
「動くのが怖い」という気持ちが強い人ほど、後者の治療が効果的で、不安が少ない人には、通常の治療でも十分効果があった
という結果でした。

つまり、「どんな体か」だけでなく「どんな気持ちで痛みをとらえているか」を考えた治療が、とても重要であることがわかってきたのです。
痛みを長引かせないために大切なこと

- 痛み=必ずしも「体が壊れているサイン」ではない
- 「怖いから動かさない」は、かえって回復を遅らせることがある
- できる範囲で少しずつ動くことが、回復への近道になる
そして何より、
不安や恐怖を一人で抱え込まないこと
医療機関を受診し専門家に相談することで、まずは痛みの原因を突き止め、「どこまでができて、心配しすぎかどうか」を整理するだけでも、体は動きやすく回復のスピードも早くなっていきます。
まとめ
- 痛みの慢性化には「心の反応」が深く関係している
- 痛みへの恐怖と回避行動が悪循環を生む
- 心理状態に合った説明と治療が、回復を助ける
もしあなたが、
「検査では異常がないのに痛みが続いている」
「動くのが怖くて生活がしづらくなっている」
と感じているなら、それは『気のせい』ではありません。
正しく理解し、少しずつ向き合うことで、体はちゃんと治っていきます。
一緒に頑張りましょう!


